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科目の基本情報

開講年度 2019 年度
開講区分 工学部分子素材工学科/総合工学科応用化学コース ・専門教育
受講対象学生 学部(学士課程) : 3年次
選択・必修 選択
授業科目名 分子素材工学特別講義Ⅱ
ぶんしそざいこうがくとくべつこうぎⅡ
Special Lecture II
単位数 1 単位
ナンバリングコード
EN-OTCH-2

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※最初の2文字は開講主体、続く4文字は分野、最後の数字は開講レベルを表します。

開放科目 非開放科目    
開講学期

前期

開講時間 木曜日 5, 6, 7, 8時限
(講義日指定)
開講場所

担当教員 川端 成彬(非常勤講師)

学修の目的と方法

授業の概要 環境問題の現実的な解決方法について解説する。
学修の目的 環境問題を現実的に解決できる人材を育成する。
学修の到達目標 地球環境問題の全体像を視野に入れ、的確な戦略に基づいた環境保全活動に必要な、基礎的知識を獲得する。
ディプロマ・ポリシー
○ 学科・コース等の教育目標
○ JABEE 関連項目
 社会人としてふさわしい幅広い教養をもつ。化学の研究者・技術者として、基本的な専門知識を修得している。【知識・理解】
 自然現象を化学の観点から論理的に説明できる。科学技術や社会活動に関する問題を化学の観点から思考できる。【思考・判断】
 化学に関する技術や知識について、自主的かつ継続的に学習できる。【興味・関心】
 科学技術による社会への貢献や自然に与える影響について考えようとする姿勢を備えている。【態度】
 化学の問題に関する研究や開発を計画的に進め、まとめることができる。【技能・表現】

○ 全学の教育目標
感じる力
  •  感性
  •  共感
  • ○主体性
考える力
  • ○幅広い教養
  • ○専門知識・技術
  • ○論理的・批判的思考力
コミュニケーション力
  •  表現力(発表・討論・対話)
  •  リーダーシップ・フォロワーシップ
  •  実践外国語力
生きる力
  • ○問題発見解決力
  •  心身・健康に対する意識
  •  社会人としての態度・倫理観

成績評価方法と基準 小テスト10%、レポート50%、期末試験40%、計100%
授業の方法 講義

授業の特徴

PBL

特色ある教育

地域理解・地域交流の要素を加えた授業
その他、能動的要素を加えた授業(ミニッツペーパー、シャトルカードなど)

英語を用いた教育

授業改善の工夫 FD、JABEE、受講生の授業評価、アンケートなどを参考に改善する。
教科書 使用しない
参考書 使用しない
オフィスアワー 非常勤講師なので、講義終了後の講義室で、時間の許す限り学生達との交流を行なう。
受講要件 特にない
予め履修が望ましい科目 特にない
発展科目 特にない
その他 一方的解説ではなく受講生と一緒に考える講義。

授業計画

MoodleのコースURL
キーワード 環境マネジメント,自然エネルギー,資源循環利用,ゼロエミッション,環境保全,環境政策,環境NGO,環境教育
Key Word(s) Environmental Management, Natural Energy, Circulating Use of Resources, Zero Emission, Environmental Protection, Environmental Policy, Environmental NGO, Environmental Education
学修内容 1.地球環境問題の解決を目指す基本戦略と戦術
 環境マネジメントの目的は地球環境問題を手際よく解決に導くことである。様々な方策の貢献度を多角的に評価し、的確に組み合わせて現実に問題を解決できる、戦略と戦術が不可欠である。
2.エネルギーを持続的に利用して行う環境保全
 化石燃料の本格的な利用は産業革命以降だが、300年間に人口は5倍に、1人当り消費量は激増した。消滅する化石燃料やウランは持続的に使えずバイオ燃料の持続的利用は生態系を維持できる範囲に限定される。水力、風力、地熱、太陽光などのエネルギーを持続的に利用する生活に改める必要がある。
 自然エネルギーに切り替えると温暖化が緩和される。熱汚染を無視した二酸化炭素隔離策の効果は限定的である。原子力発電は火力発電よりも熱汚染率が高い。火力発電や原子力発電が大量に放出する水蒸気は、二酸化炭素よりも温室効果が著しく大きく、凝縮する際に大量の熱を放出する。核廃棄物問題も深刻である。
3.再生可能資源を循環利用して行う環境保全
 水資源、森林資源、水産資源などが危機的状況にある。アラル海が干上がり、オガララ帯水層が枯渇し、世界各地で淡水資源が減少した。森林の衰退で洪水災害が増え、環境と調和しない農業や牧畜で農地や牧草地が劣化した。乱獲で水産資源が減少した。資源の持続的な供給を疎かにすると生活が破綻する。淡水資源は節水や水の再利用に留まらず、森林土壌の保水力を活用した水源涵養林の役割が不可欠である。森林は維持と管理が重要である。水産資源は栽培漁業と年齢の低い魚を逃がす漁獲法で回復する。
4.枯渇する資源を循環利用して行う環境保全
 動植物由来の資源は自然界の物質循環サイクルを使えば持続的な供給と利用が可能であるが、金属などは人工的な循環利用が必要である。資源投入量の削減度に基づいてリサイクルを5段階に評価する。用途変更を伴うため資源投入量を削減できない欺瞞型リサイクル(評価1)、多量の資源追加投入が不可欠なマテリアルリサイクル(評価2)、資源投入量を激減させるが破損や劣化で終了するリユース(評価3)、製品の長寿命化や小型軽量化で資源投入量をさらに削減するが資源枯渇に対応できないライフサイクル重視型リサイクル(評価4)、資源枯渇に対応できる循環利用(評価5)である。枯渇性資源の持続的な供給と利用はリサイクルのレベルを上げて可採年数を延長し、資源採取が不必要になれば実現する。資源循環利用では製品を供給する動脈産業と使用済資源を動脈産業に戻す静脈産業の緊密な連携が不可欠である。
5.資源を循環利用するゼロエミッション社会の構築
 廃棄物問題は資源の循環利用を疎かにした浪費に原因がある。廃棄物排出量は動脈産業と静脈産業の業務を分離すると増加し、業務を緊密に連携すると減少する。例えば使用済製品を製造元に戻す業界では資源の循環利用が進み、廃棄物の排出量が少ない。物理的な拡大生産者責任で動脈産業と静脈産業の連携を義務付け、資源を循環利用して廃棄物を削減する必要がある。生ゴミや屎尿は肥料化すると循環利用できる。循環利用が難しい場合は消費量の削減による廃棄物発生量の抑制が優先課題である。
6.化学物質による健康被害と環境汚染の根絶
 水銀による健康被害はローマ時代からあるが食物連鎖の過程で濃縮する現象に気付かず水俣の事件を招いた。有機塩素化合物に内分泌撹乱性化学物質が潜むことに気付いたのは最近である。アスベストによる健康被害もギリシャ・ローマ時代からあるが社会の認識が甘く被害が拡大した。フロンによるオゾン層破壊も認識不足が招いた。不幸な事件を未然に防止する必要がある。深刻な被害を招いたのは化学物質の性質に関する貧しい知識である。生体に対する化学物質の多彩な作用に関する情報が重要である。毒性の強い重金属にも必須性がある。発がん物質が人体に有益な作用を示す領域があってホルミシス効果と呼ばれる。毒物と無害物質に分けるのは不適切で条件を定めて判断する必要がある。
7.利益を絶対視する市場経済と環境保全の両立
 経済発展に伴い環境問題が深刻化して環境負債を残したが、問題解決するため市場の論理を否定する必要はない。環境負債を残したのは目先の利益に執着する活動で、持続的利益を優先する活動は環境負債を残さず持続的に発展する。化石燃料やウランの利用は持続性がなく温暖化と核廃棄物が環境負債として残る。再生可能エネルギーの利用は持続性があり環境負荷を残さない。再生可能資源の持続的な利用は環境負荷を削減する。上辺のリサイクルは持続性がなく不用廃棄物を残す。正しいリサイクルは資源を持続的に供給して利用し、廃棄物排出量が少ない。物理的な拡大生産者責任に伴う利益が正しいリサイクルを推進する。
8.事後対策から脱却して環境保全社会へ導く法規制
 地球環境問題では法規制が重要だが十分に機能していない。有害物質による環境汚染が1970年頃に最悪期を脱したのは世論の成果で、法規制は事後対策に終始した。アスベスト規制のように世論が弱いと置き去りにされた。法律を遵守しても安心できないので、環境保全に自主的に取り組む環境補償活動が起きた。今後はドイツの再生可能エネルギー法のような社会変革を先導する法規制に期待される。有害物質による健康被害と環境汚染はPRTR法とMSDS制度による未然防止に期待される。
9.啓蒙活動,環境NGO活動及び環境教育の役割
 環境研究に基づいた的確な情報、環境NGO活動による世論の喚起、環境教育による社会全体の問題認識の向上が必要である。  
事前・事後学修の内容 本講義は予習よりも復習が重要で、先入観に捉われずに受講して熱心に復習することを期待する。

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