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科目の基本情報

開講年度 2018 年度
開講区分 生物資源学研究科(博士前期課程)生物圏生命科学専攻
受講対象学生 大学院(修士課程・博士前期課程・専門職学位課程) : 1年次, 2年次
選択・必修 選択必修
授業科目名 生理活性化学特論
せいりかっせいかがくとくろん
Advanced Biofunctional Chemistry
単位数 2 単位
他学部・他研究科からの受講 他専攻の学生の受講可, 自専攻の学生の受講可, 他研究科の学生の受講可, 自研究科の学生の受講可, 他講座の学生の受講可, 他類の学生の受講可, 他学科の学生の受講可, 他学部の学生の受講可
有機化学・生化学を基にして、農薬や医薬品の化学構造、作用機作を解説する講義科目です。医薬・農薬の化学に興味のある学生諸君の受講を歓迎します。
市民開放授業 市民開放授業ではない
開講学期

前期

開講時間
開講場所

担当教員 稲垣 穣(生物資源学部生物圏生命科学科)
増田 裕一(生物資源学部生物圏生命科学科)

INAGAKI, Minoru
MASUDA, Yuichi

学習の目的と方法

授業の概要 私たちの生活に欠くことのできない薬品を有機化学の観点から学び,薬品の性質や作用の根拠を理解する.重要な農薬や医薬品を整理し,それらの化学構造と作用機構の関連を解説する。この科目は,有機化学と生化学の知識を実際に世の中で役立っている農薬や医薬などの薬の根底に流れる仕組みを理解するのに役立てるための実践的・発展的な科目である。したがって,将来,化学の専門性を生かして,医薬品,食品,農業生産,品質管理,および,環境保全などの現場で働く職業人として活躍することが期待されている生物資源学研究科の学生諸君にぜひとも整理した知識を身につけてほしい分野である。また,それらを専門としない者にとっても,科学的素養を身に付けた良い市民として,さらに,次世代を育む賢い親として,科学的判断を基に薬品を効果的に,賢く利用するための”薬のリテラシー”を身につけることも重要である。
学習の目的 薬が効く理由(作用機構)を有機化学および生化学の観点から理解し,そのために必要な化学構造の共通性に気づく。そして,化学構造に基づく分類を整理して頭に入れる。それによって,化学構造を見れば,何の薬か有る程度判断できる知識と能力を身につける。化学構造の情報から,溶解性や安定性などの物理化学的な性質を推定し,作用機構の知識から,薬の効果的な使い方を考えることができる様になる。
学習の到達目標 代表的な農薬(殺虫剤,除草剤,殺菌剤,植物化学調節剤)の化学構造を書くことができ,それらの作用機作を説明できる。
代表的な医薬品(化学療法剤,抗生物質,抗炎症剤,抗ヒスタミン剤,抗腫瘍薬,中枢神経作用薬,抗ウイルス薬)の化学構造を書くことができ,それらの作用機作を説明できる。
農薬や医薬品の化学構造を見て,何に効く薬なのかおおよそ判断できる。
農薬や医薬品の化学構造を見て,溶解性・安定性などの物理化学的性質を推定できる。
農薬の製品ラベルや市販医薬品の成分表,処方箋に書かれた薬品を自ら調べたり,より良い使い方を考えることができる。
ディプロマ・ポリシー
○ 学科・コース等の教育目標

○ 全学の教育目標
感じる力
  •  感性
  •  共感
  • ○倫理観
  • ○モチベーション
  • ○主体的学習力
  • ○心身の健康に対する意識
考える力
  •  幅広い教養
  • ○専門知識・技術
  • ○論理的思考力
  •  課題探求力
  •  問題解決力
  • ○批判的思考力
コミュニケーション力
  • ○情報受発信力
  •  討論・対話力
  •  指導力・協調性
  • ○社会人としての態度
  •  実践外国語力
生きる力
  • ○感じる力、考える力、コミュニケーション力を総合した力

医薬品の必要性は誰もがすぐに認めるが,農薬の必要性については,異を唱える人がいる。しかし,医薬も農薬も同じ薬であって,生物の営みを人為的に変えようとする化学物質であり,両者で作用機構(効く理由)が同じ物も多々ある。そこで,薬の根底にある,有機化学・生化学の知識を整理して身につけ,いわゆる世の中の風評に惑わされず,科学的判断に基づいて,行動するべく,薬に対する自分の視点を身につける必要がある。

授業の方法 講義

授業の特徴 能動的要素を加えた授業 グループ学習の要素を加えた授業 Moodle

教科書 教科書:指定せず,講義資料を紙媒体あるいは,Moodleを利用して電子媒体で配布する.
参考書 参考書:新版農薬の科学(山下恭平ほか著,文永堂出版),メディシナルケミストリー(山川浩司ほか著,講談社サイエンティフィク),農薬学(佐藤仁彦,宮本徹著,朝倉書店),治療薬マニュアル(高久文麿,矢崎義雄監修,医学書院),ヴォート基礎生化学 第2版(D. Voet他著,田宮信雄他訳,東京化学同人),生化学反応機構(J. McMurryほか著,長野哲雄他訳,東京化学同人),世界の新薬 2001-2005(村上尚道著,シーエムシー出版), ベーシック創薬化学(赤路健一,津田裕子,林良雄著,化学同人),病気と害虫ハンドブック(NHK趣味の園芸別冊,NHK出版),ピシャと効かせる農薬選び便利帳(岩崎力夫著,農文協),新しい植物ホルモンの科学(小柴共一,紙谷勇治編,講談社サイエンティフィク).
成績評価方法と基準 期末試験(30%), グループワーク(30%), 課題(40%), 計100%.全体を通して60%以上の得点を獲得した者を合格とする.
オフィスアワー 水曜日16:00〜18:00,金曜日16:00〜18:00,場所生物資源665号室(稲垣)663号室(増田)
受講要件 基礎的な有機化学と生化学を理解していること.有機化学が好きで,農薬や医薬に興味を持ち,それらの知識を専門分野として活用して行きたい諸君の受講を待っています。
予め履修が望ましい科目 有機化学I,II,あるいは,有機化学概論,物理化学,生物物理化学, 微生物学,生物化学,生化学I.
発展科目 生物機能化学,創薬化学,環境化学概論,タンパク質科学
授業改善への工夫 親しみやすくかつ洗練された授業を目指す.Moodleを活用して,講義内容の予告や再録,試験や課題の模範解答の公表など,授業時間外の自習学習の支援を充実させる. 講義内容は,前半の農薬,後半の医薬の大きく二つの観点をまとめる,前半を稲垣が,後半を増田が主に講義する。
その他 受講生は連絡や資料の授受のため,Moodle HPに必ず登録すること.本講義は,生物有機化学と密接に関連しているが,有機化学的な難易度は,本講義がよりやさしい.有機化学に不慣れな者は,まず本講義を履修した後,有機化学の基礎を復習することを強く進める。個人で学習する場合は,アドバイスすることができるので,ぜひ相談してほしい。

授業計画

キーワード 医薬,農薬,化学構造,生理活性,作用機構,選択毒性,代謝,分解,排泄,活性化,プロドラッグ,副作用,ドラッグデザイン,構造活性相関,受容体,抵抗性,総合的有害生物管理,科学者倫理
Key Word(s) medication, agrochemicals, biological activity, function mechanism, selective toxicity, metabolism, degradation, egestion, drug activation, prodrug, side effect, drug design, structure-activity relation, receptor, drug resistance, integrated pest management (IPM), scientific ethics
学習内容 1. ガイダンス,内容概説,成績評価法,身の回りの薬,毒物と劇物,科学者倫理
身近な薬に含まれる成分,農薬無しではもう暮らせない,毒物劇物の定義と種類
2. 殺虫剤1-農薬の定義,神経系殺虫剤の分類と作用機構
  農薬発展の歴史,農薬イコール毒は誤解,昆虫の神経系とその阻害物質
3. 殺虫剤2-ピレスロイド,除虫菊の有効成分と構造改変,分子変換とドラッグデザイン
  最古の殺虫剤除虫菊,天然物の効力を合成物で代替えする,分子は進化する
4. 殺虫剤3-選択毒性,解毒と活性化,抵抗性と新しい殺虫剤,総合有害生物管理
  虫に毒で人間に無害の実現,異物の分解と排泄の仕組み,抵抗性の発達とその予防
5. 除草剤1-雑草の定義,除草剤の種類と使い方,除草剤の分類と作用機構1
  世界の10大雑草,農薬の主流除草剤,厳しい選択性の要求,除草剤の種類と作用機構
6. 除草剤2-除草剤の分類と作用機構2,植物ホルモンと植物化学調節剤
  除草剤の種類と作用機構2,イネ科植物は穀物であり雑草,植物ホルモンの利用
7. 殺菌剤-殺菌剤の分類と作用機構,農業用抗生物質,プラントアクチベータ
  植物も病気になる,植物病原真菌,負相関交差耐性,植物を元気にする薬
8. 抗菌薬1-合成抗菌薬, 静菌的抗生物質
9. 抗菌薬2-殺菌的抗生物質
10. 抗ウイルス薬-ヘルペスウイルス, エイズウイルス, ヘルペスウイルスに対する薬
11. 抗腫瘍薬-アルキル化剤, 白金製剤, 代謝拮抗薬, 微小管阻害薬, ホルモン療法剤, 分子標的薬
12. 抗炎症薬-ステロイド性抗炎症薬と非ステロイド性抗炎症薬
13. 生活習慣病治療薬-降圧薬, 高脂血症治療薬, 糖尿病治療薬
14. 神経作用薬-抗精神病薬, パーキンソン病治療薬, 抗うつ薬, 睡眠薬
15. グループワーク
16. 期末試験
事前・事後学修の内容 毎回の授業の要点をまとめる課題を科す。チームのメンバーと協力して農薬や医薬品に関する,薬効,作用機構を有機化学的な観点から調べて説明するプレゼンテーションを行う。試験には,授業内容を自らまとめたメモ(A4で8枚)の持ち込みを許可する.
ナンバリングコード(試行) BO-AGCH-4

※最初の2文字は開講主体、続く4文字は分野、最後の数字は開講レベルを表します。 ナンバリングコード一覧表はこちら


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